蓬門

世の隅でコソコソと蠢く

集会の自由と?

高輪プリンスが日教組の集会を拒否して、訴えられて、今日地裁の判決が出たようです。3億円の賠償命令と謝罪広告掲載命令で、ホテル側の全面敗北。法曹界では好意的に受け入れられているようですが、しっくりこないので、少し調べてみました。


まず、旅館業法を見てみると、下記条文がある。
 第五条  営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
  一  宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるとき。
  二  宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
  三  宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき


更に宿泊は「寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。」と定義されており、今回の集会の開催云々については、旅館業法の外の話となる。ただし、契約には関係者の宿泊が含まれていたようなので、この点については、旅館業法によって規制される。ホテル側が契約一方的に契約を解除したとあるが、宿泊も含めて断るとなると、その点の罪からは逃れられない。今回の根本的な課題は「集会の開催」なので、宿泊云々はこれ以後触れない。


では、次に日教組が主張する「集会の自由」について、日本国憲法 第21条では下記に通り定められている。
 第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。


この条文の意味するところを考えると、大日本帝国憲法では大幅に制限されていた「表現の自由」が、個人の権利として制限を受けることがなくなったことを明示するものだと考えられる。当然、私企業に対して会場の提供を強制するものではなく、官憲や公的機関が邪魔をしない、上記の権利行使のために協力することを示していると考えるのが妥当だろう。よって、ホテル側は基本的には集会を受け入れなければならないが、ホテル側に正当な理由があれば、集会を拒否することができることになる。この正当な理由というのが憲法第12条の言うところの「国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」となるのが妥当だろう。


ここまで来ると、話が契約の細部や出来事の流れが鍵になりそうだ。報道によると、日教組側が会場の使用を申し入れ、この時点でホテル側は契約。しかし詳細を調べると周辺への影響を避けられないとして、ホテル側が契約を一方的に解除。これに対して日教組が裁判所に異議申し立てを行い、裁判所が仮処分命令を出すも、ホテル側は無視、結果集会は開催できなかった、という流れ。


仮処分命令とは何か、いかなる効力を持つのか疑問に思ったので調べてみた。仮処分命令は民事保全法に基づき、権利確定までの期間、権利を保全するために裁判所が出す命令のようだ。短期的な係争では実質的な司法的な判断となることも特徴的である。


こうして考えると、判決でもこの仮処分を無視したことが重視されている。ある意味司法の意趣返しとしての一面を今回の判決には感じざるを得ないのは、このせいだろう。となると、今後の控訴審で重視されてくるのは、この仮処分をどう考えるかが分かれ目の一つだろう。この仮処分は短期間で出されるため、債権者側に立った判断をするのが常識的だろう。でないと仮処分命令の意味がなくなってしまう。そこでこの仮処分の適当性を判断する基準となるのが、ホテル側の言い分となる周辺への影響だろう。特に注目されるのが、周辺の受験と結婚式の予約だと個人的には考える。どちらも当事者にとっては、人生が決まる重大なイベントだ。これらへの想定される影響が「公共の福祉」に反するものかどうかの判断によって、全く異なった判断が下されるのだろう。


以上からの所感は下記の通り。
 ホテル側は契約したのがそもそもの誤り、もっと調査するべきだった。しかし3億円の賠償は異常に高い、納得がいく金額ではない。
 仮処分を無視された、裁判所の意趣返し的な判決に疑問。仮処分はあくまで暫定処置であり、そこに納得がいかないからホテル側も争っているはず。そこの議論は避けられない。
 こうした裁判を起こしたことが、教育的であるか日教組には自省して欲しい。自分たちがどのような目で見られているか、世間の感覚からのずれを認識すべき。


以上を総合した個人的な結論は、ホテル側の賠償で落ち着くが、落ち度としては契約の一方的解除と仮処分を無視した点であって、契約の拒否権そのものはあったと考える。
個人的には日教組の二枚舌*1が、全く教育的に見えず、都合の良いコトばかり主張しているように見えない。つまり日教組が嫌いなのです。自分たちが教育のために討議するというが、受験も立派な教育活動の一つ(日教組は否定してるけど、以後の人生に大きく影響するのは否定できない)、自分たちの権利で受験に影響を与えていいと考えているなら、教師失格でしょう。

*1:国家・国旗法案を無視するあたり