蓬門

世の隅でコソコソと蠢く

ノルウェイの森

何とはなしに、本屋に並んでいた文庫版のノルウェイの森を買ってみました。純文学なのかよく分かりませんが、なかなかに面白かったです。読んでいて印象的なのは、性交渉が全く救いにならず、むしろ「死」に引きずり込むような、行為の救いのなさが印象的でした。しかしラストでは、主人公は生きることを選択し歩き始め、読後感はジメジメとせず、乾いた印象でした。*1
読んでいて薄ら薄ら、直子の自死を感じていましたが、多くの人が直子の影に死を感じていたようです。こうした作品を読んだ多くの人に共通の印象を抱かせるのは、文筆家の卓越した力量と言わざるを得ないでしょう。しかし、自分が読んでいて印象に残ったのはレイコさん。なぜだか蛙さん*2をイメージしてしまったせいでしょうか。なにやら30後半くらいになった想像の蛙さんとイメージが重なったせいか、意識が集中してしまったようです。なので、レイコさんが生きることに向けて歩き出したラストはとてもお気に入りのシーンです。
まだまだ作品の全体像がつかめていないので、また時間を見て読み直したい作品になりました。

*1:単純にハッピーではない

*2:私の思い人