蓬門

世の隅でコソコソと蠢く

クッカーの選び方

スノーピークのクッカーを使って、少し自分が求めているものが見えてきた。
初めて買ったときの考えなども含めてまとめておこう。


スノーピークを買ったとき
これを買ったのはバイクでのキャンプツーリングを念頭に選んだものだ。当時はSR400に乗っていた。*1
この時考えていた条件は下記の通り。
 ・アルミ製・・・お米を焦げ付かせずに炊きたい
 ・250OD缶が収納できる・・・積載力に余裕がないのでコンパクトであることに越したことはなかった
 ・安い・・・ケチだった


で、残った候補は、背が高いものと背が低いもののどちらかとなり、調理がしやすそうな、背が低いクッカーを選んだ。
結果はというと、安いものを選んだ結果コーティングがなく、料理によっては金属味が気になった。
また、メーカー公称は250缶が収納できると謳っていたが、入るには入るが蓋がかっちり閉まらない。
と、致命的な不満が出る結果となった。


以上を踏まえて、次のクッカーの条件を考えてみる。
 ・アルミ製+コーティング加工
 ・250OD缶が収納できる
 ・鍋二つ、フライパン1つ以上のセット


サイズとしては、今のクッカーは悪くないだけに、致命的な不満が出たのは残念。
今のラインナップは大きさとしては中途半端だが、250缶収納サイズで限定となると、致し方ないだろう。
値段はアルミ製だと5000円前後に集まっているので、安いに越したことはないが、条件からは外した。


その結果、今の候補は
 ・PRIMUS(プリムス) クッカー イージークックNS・ソロセットM

 ・PRIMUS(プリムス) ライテックトレックケトル&パン ・mont-bell(モンベル) アルパインクッカー ディープ11+13 セット ・mont-bell(モンベル) アルパインクッカー 14+16 パンセット


mont-bell(モンベル) アルパインクッカー 14+16 パンセットは一人で使うにはやや大きいので、上3つの組み合わせかなぁ。

*1:柔らか乗り心地でいいバイクだったと思う

キャンプ道具を追加したい!

で、今回はゆるキャン△の影響。2018冬アニメは豊作だったそうだ。ストーリーは「宇宙よりも遠い場所」が良かったが、自分のリアルへの影響の大きさは「ゆるキャン△」だった。ゆるキャン△を見たことで、キャンプツーリング熱が一気に高まってきた。今まではキャンプツーリングは旅費を安くするための側面が大きかったが、久しぶりにキャンプしたい、楽しみたいと思った。とりあえず、自分の持ってるキャンプ道具をチェックした。確認してみると、足りないもの、満足度が低いもの、活用度が低かったからもっと活用したいもの、が確認できた。

  • 持っているもの

   満足
    シュラフ:mont-bell ULダウンハガー#3(2008年モデル)
      スパイラルになる前のモデル、ほぼオールシーズン、本州の夏にはオーバースペックなので掛け布団になる


    マット:イスカ コンフィマット120
      標準的な快適性、空気を入れすぎると硬くなりすぎるので少し抑え目に入れるのがポイント


    テーブル:ロゴス ミニ膳テーブル
      折り畳みテーブル、キャプテンスタッグのものに似てるが天板がぐらつかないが一回り小さい、現在はカタログ落ち、


    シェラカップスノーピーク チタン
      軽い、薄いのでベコベコするが問題はない


    イス:プロックス あぐらイス
      やや嵩張るが十分


   満足だがもう一声
    テント:mont-bell クロノスドーム2型
      広さは十分で快適、ややかさばるがバイクなら許容範囲、キャンプ用ならもう少し広い前室がほしいところ


   イマイチ
    シングルバーナー:スノーピーク ギガパワーマイクロマックス
      五徳が小さく安定感に欠く、思ったよりも風に弱い、プラケースよりも小袋の方が使いやすい


   あかん
    クッカー:スノーピーク アルミパーソナルクッカー
      表面コーティングがないのでラーメン作ると金属味がする、250サイズのOD缶の納まりが微妙


   活用度低
    オルトリーブ 自転車用サイドバッグ
      自転車で旅行したときに使ったもの、しっかりしたバッグなのでバイクでも使えるようにしたい

  • 欲しいもの

    ランタン・・・ヘッドライトだとちょっとわびしい
    クッカー・・・上記の通り、コーティングがあるやつが欲しい
    タープ・・・テントの前室の狭さをカバーするとともに広々とした空間演出、バイクにはちょっと大荷物か
    チタンカップ・・・飲み物用に
    枕・・・ないと睡眠の質が下がる

  • 使ってみたい、買い換えたい(完全に趣味の領域)

    焚き火台・・・キャンプといえば焚き火
    コット・・・どれくらい快適か試してみたい
    シングルバーナー・・・SOTOのウィンドマスターがかっこいい、オプションの4本五徳が安定感高そう


こうしてみると、スノーピーク商品の評価が低い。満足度とコストのバランスを考えると、カトラリーとかちょっとした小物以外は多分もう買わないだろうあぁ。購入優先順位が高いのは、枕とランタンとチタンカップ。次にクッカー。いや、クッカーの方が優先順位高いか?

「ゆるキャン△」でキャンプ熱が高まる

下書き保存しようとしたら失敗して一部しか保存できなかったが、がんばそうて書き直す。

3月中旬から、運動不足防止とダイエットと心配強化を兼ねて、ローラー台を回し始めた。
すでにピーク時から△2.5kgと順調に体重が落ちているのが楽しい。もう少し落として、おなか周りがすっきりするとうれしい。
1日30分から1時間ほど回しているが、ローラー台を回すのは景色の変化もなく単調で飽きがちだ。
と言うわけで、ネットで動画を見ながら回していると、アニメも見れて、体力もついて一石二鳥だ。
契約したAmazon prime会員に申し込んだ甲斐があったというものだ。
他のネット配信でもチェックできていなかった「けものフレンズ」を無料で見れたのも幸いだった。


おかげで、この半年で見れたアニメは下記の通り。他にも見たのあったっけ?
 ガンダムW化物語終物語猫物語、GATE、衛宮さんちの今日のごはん、ガールズアンドパンツァー、ポプテピピックけものフレンズゆるキャン△宇宙よりも遠い場所

日本丸の転落死亡事故について、数日たってのまとめ

前回はかなり感情に任せて書いた感がある。事故後のネットの反応の結果も踏まえて、まとめておきたい。

  • ネット上の反応

非常に大雑把で、数えているわけではないので私の観測範囲の印象でしかないが、おおむね次の通り。
・陸上の人・・・え?登るときは命綱ないの?
・高所作業者・・・レベル低すぎ、安全対策が欠如している(唖然・怒り)
・帆船ファン・・・セイルドリルが見れない残念 or 帆船廃止にしないで
・船舶関係者・・・帆船実習は意義あるからやめるな、とうとう起きたね、落ちた実習生のKYが足りない、帆船やめれば、今まで事故なかったから大丈夫、安全対策が必要 etc.反応様々


特筆するべきは、船舶関係者の意見が現状の肯定と否定の両方が存在したことだ。私個人は、この状態こそが船員の安全教育に失敗したことを端的に物語っていると思う。
高所作業での安全確保は、転落の恐れがある場所では常に安全策などで確保されていなければならないが、そのことが共有されていないのだ。

また帆船実習を肯定的に捉える意見では、具体性のある意見が少ない、または他の訓練で代替可能と思われるもの、または単純な精神論ばかりだった。
帆船実習でしか船乗りの資質は養えない、という意見には水産大学校の卒業生を否定するのか?なぜ自社養成では帆船を用いていない理由を考えたことは無いのか?との反論に有効な説明はできていなかった。
皮肉か本心か分からないが、帆船の存在理由は思い出作りだからなくすな、との意見には、真実が見えた気がした。

  • 法規面で問題は無かったのか?

関連する法規としては、船員労働安全衛生規則 が該当する。労働安全衛生規則は、労働安全衛生法では船員法の対象には除外されているため、残念ながら対象にならない。
該当条文は下記の通り

(高所作業)
第 51 条

船舶所有者は、床面から二メートル以上の高所であつて、墜落のおそれのある場所における作業を行わせる場合は、次に掲げる措置を講じなければならない。
一 作業に従事する者に保護帽及び命綱又は安全ベルトを使用させること。
二 ボースンチエアを使用するときは、機械の動力によらせないこと。
三 煙突、汽笛、レーダー、無線通信用アンテナその他の設備の付近で作業を行う場合に、当該設備の作動により作業に従事している者に危害を及ぼすおそれのあるときは、当該設備の関係者に、作業の時間、内容等を通報しておくこと。
四 作業場所の下方における通行を制限すること。
五 作業に従事する者との連絡のための看視員を配置すること。ただし、事故があつた場合に速やかに救助に必要な措置をとることができる状態で二人以上の者が同時に作業に従事するときは、この限りでない。
2 船舶所有者は、船体の動揺又は風速が著しく大である場合は、緊急の場合を除き、前項の作業を行なわせてはならない。


今回特に注目されるべきは1項1号の条文だ。また今回の事故では巻き込まれた者はいなかったが、1項4号についてもきちんと守られていたのか気になるところである。
事故は高所から降りる途中で起きたと報道されている。昇降が作業に含まれるかは、解釈の問題になってくるので、法律上問題があったとは明言はできない。
ただし、船員の特殊性から対象外になってはいるものの、基本的には労働安全衛生規則に倣っているように見える。いずれにせよ、これらの法律は労働者・船員を保護が趣旨であるから、安全対策が不十分であると指摘される可能性は高いのではなかろうか。
実際、労働安全衛生規則では、例外規定が設けられている条文に対して、例外が認められるハードルは高いようだ。

以下、海技教育機構のHPの組織紹介からの引用

海技教育機構について
四面を海に囲まれた我が国において、エネルギー資源や食糧等の輸入及び国内生産品等の輸出による貿易を担う外航海運、並びに、国内産業を支える物資輸送を担う内航海運は、経済、国民生活に大きな役割を果たしています。海運の安定輸送は、高度な船舶運航技術を持つ船員はもとより、船員の経験を有し、陸上で活躍する海技者や船舶を安全に導く水先人に支えられています。

我が国における少子高齢化の進行による後継者不足は船員を取り巻く環境下でも厳しく、更には、船舶の技術革新、国際的な安全基準や環境保全の強化に対応するため、より高度な船舶運航の知識及び技能が船員に求められ、船員の確保・育成が喫緊の課題となっています。

独立行政法人海技教育機構は、船員養成のための学科教育と練習船による航海訓練を通じた一貫教育を実施するとともに、商船系大学や高等専門学校などの船員教育機関の学生に対する航海訓練を通じ、海運業界のニーズに応じた新人船員の養成に加え、水先人の養成をはじめとする実務教育を実施しています。

現在、我が国の海事産業界は一体となって海洋立国日本を支える人材の育成に取り組んでいます。当機構は、船員養成機関としての更なる機能強化を図り、船員養成の核として、優秀な船員の養成を着実に推進し、海上輸送の安全と安定に貢献するとともに、我が国の将来に向け、海事国際機関や諸外国の船員養成機関との協調と連携を図り、世界の海事産業の発展に貢献してまいります。

平たく言えば、実務教育により船乗りを養成する組織である。
機構の短期大学校・技術学校、高等専門学校、商船大学で座学を行い、練習船で実習を行うのが基本的な流れである。
学校では安全に関する座学もカリキュラムに含まれており、練習船で初めて船の上で実施する。事故に対する意見として、実習生自身の危険予知が足りない、というものがあったが、全く的外れだと私は思う。
座学→実習で身に着けるための練習船なのだから、練習船がやり方の指導を行わなければ、教育放棄でしかない。
また、危険予知をしたところで、最後に行き着く対策は、ハードが用意されていない現状では「落ちないように気をつける」または「安全対策不十分を理由に実習拒否」しかなく、実習生には完全に防ぐことはできないのだ。
安全にまつわる練習船の役割として重要なのは、安全に関する用具の紹介だ。マストの昇降は、陸上であれば、ダブルのランヤードやロリップ、安全ブロックなどを利用する場面である。
しかし、適切な方法を学ばなければ、どのような用具があるかすら、実習生には分からないのだ。
あるべき姿は、危険をがんばって乗り切るではなく、用具の活用などで危険な場所でも安全を確保できるようになる、なのだ。

  • 事故への提言

すでに色々書いてきたが、今回の事故は帆船の要否に及ぶ重大なものだ。私個人としては、帆船教育は必須のものではなく、他の手段で代替可能であると思っている。
帆船の存在を継続する理由付けは、優れた宣伝材料であることと思い出作りしかないだろう。もちろん、私はそれらに若者の命をかけさせる価値はないと思っている。
現状のままで存続させたいというのであれば、そう主張する人たちが転落して死亡する可能性込みでセイルドリルも登檣礼をやればいいのだ。
どうしても帆船を存続させるのであれば、ハード・ソフトの両面から安全対策を再構築しなければならない。
ここで「再構築」という言葉を使ったのは、現状の改善では足りないものになるに違いないと思ったからだ。
ここまでは私の感想。ここからが提言だ。


・やるべき事1:事故にならなかったトラブルの発生状況と報告されなかった経緯を明らかにする
  過去何年かの実習生へのヒアリングを行い、登檣時のヒヤリハットや軽度のケガなどがどの程度発生していたかの検証を行うこと。
  統計的な分析を実施するとともに、なぜ、それらが報告されなかったり、見過ごされたかを検証する。
  事故は小さな芽のうちに摘まなければ、大事故につながる。それらを見過ごさないための流れを作るための基礎資料とする

・やるべき事2:マスト昇降中の安全確保・転落防止手段の導入
  これは直接的な事故防止の手段の導入だ。ロリップ、安全ブロック、ダブルフックなど垂直方向移動時にも使用可能な確保の方法はある。
  現在よりも昇降に時間がかかるようになるだろうが、安全確保は最優先されるべきだ。時間がかかりすぎて実習にならないのなら、帆船実習はやるべきではない。


・やるべき事3:陸上の安全基準の導入
  船員労働安全衛生規則は、労働安全衛生規則の基準にならっているものの、一部基準が甘くなっている部分がある。
  法改正すべきかは置くとして、練習船に於いては、労働安全衛生規則以上の安全基準を適用するべきだ。
  労働安全衛生法施行令が改正され、平成31年2月からは、安全帯ではなく安全ハーネスの使用が義務付けられる。
  基本的には、これに従うべきだろう。


・やるべき事4:宙吊り状態、動けなくなった者の救助手段教育(主に教官・乗組員)
  安全帯を用いていても、宙吊り状態で胸部圧迫や内臓圧迫により死亡したり、頭部が下がって頭に血がのぼり失神するケースがある。
  そのため、宙吊り状態から速やかな救助が必要であるし、それ以外にも動けなくなった者(ケガ、恐怖など)を安全に甲板上まで降下させなければならない。
  宙吊り状態で、最短で10分程度で生命の危険に陥る場合もあると言われているので、海上保安庁など待つ時間はなく、練習船内の資源で対応を迫られることになる。
  少なくとも初期の対応をとれなくてはならない。また遠洋航海を実施する性質を考えると、船内で救助技術を持つことが望ましいだろう。


・やるべき事5:宙吊りになった者が安全を保つための教育
  宙吊りなった者が救助されるまでの間において失神や受傷を防ぐために、できるだけ安全な姿勢を保つ方法を教育する必要がある。
  基本的には、頭部を持ち上げること、胸部・内臓の圧迫を防ぐ方法であるが、そのための手段を全ての実習生に知らせなければならない。


・やるべき事6:帆船教育の必要性の根拠の明示
  私自身は帆船教育でなくてもよいと思っている。しかし、船乗り業界では、帆船は必要という声は根強い。が上記の通り、代替可能であったり精神論でしかない。
  どうしても必要だと主張するならば、統計的な数字を用いるなど科学的な根拠でもって説明する必要がある。
  すでに日本丸海王丸ともに船齢は約30年、代替の時期と考えてもおかしくはない。根拠を明確に説明できなければ、次世代の練習船では帆船は廃止になるだろう。
   追記:蒸気タービン船は減りつつあるとはいえ現役で運航されているが、練習船では廃止されたことを踏まえると、なおさら帆船の意義は?という問いは必要だろう。


以上、事故からしばらく経っての感想をまとめた。とりあえず、このまとめで今回の事故に関する記事は、海技教育機構の発表や対策などを待ちたいと思う。
それにしても、実習生のツイートは検索する限り少なく感じられる。鍵つきアカウントによるツイートが多いのか、それとも緘口令が敷かれていることによるものか。



4月30日追記
昨日、横浜の日本丸メモリアルパークで総展帆が行われたようだ。オーバーハング部をなくすように縄梯子を変更したようだが、命綱が常時使用できるような改善は行われていないようだ。
海技教育機構のからの事故に対するアナウンスはないが、お膝元で関連が深い場所でこの対応だと、オーバーハングの存在に原因を帰結させて、命綱が常時使えるようにはしないのではないかと思えてしまう。
今後の動向に注目したい。
しかし、事故の検証はどのような体制で行っているのだろうか。経験者を入れての検証が必要、などという意見があったが完全に誤りだ。
誤った経験が積み重なった結果が今回の事故なので、外部の高所作業の識者を入れて検証が筋だろう。
そういえば、メモリアルパークの展帆作業って船員法の適用外だから労働安全衛生規則の対象のはずだけど、来年から安全ハーネスに切り替えるのかな?他所事ながら気になる。

事故に寄せて思うこと

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180402/k10011388611000.html

まず、若くして夢への途中に命を落とした実習生のご冥福をお祈りする。
高校を卒業して船員になることを決めて邁進していた若者が命を落としたのは非常に悲しいことだ。


この事故を聞いたときの私が真っ先に思ったことは、「とうとう起きたか」だった。
私は、船業界独特の安全軽視と帆船礼賛の思考から、起こるべくして起きた事故だと思っている。


知らない人にとっては、なぜ命綱をつけていなかったのか?と疑問に思うことだろう。
事故の詳細は報道されてはいないが、墜落時、練習生は安全帯を身につけていたのは、まず間違いない。
では、なぜランヤードは支えることは出来なかったのかというと、彼はフックを確保箇所に掛けていなかったのだ。
これは帆船に登るとき下りるときのスタンダードなやり方なのだ。安全帯は、目標とする場所まで使用しないで登るのだ。
一般公開で帆船のマストに登る練習生を見たことがある人もいるだろう。彼らは、無防備な状態で、命がけで登っていたのだ。
マストに登っている途中、練習生がマストを登っている途中、身を守る手段はしっかりと掴むしかないのだ。


なぜ、このような状態が見過ごされている原因は、上にも書いた、日本の船舶業界の安全軽視の風潮と帆船礼賛思考だと私は思う。


まず、船の業界はその特殊性から人的流動性が低く、場所も海上で陸上の社会との接点が薄い。さらに高齢化も進んでいる。
そのため、昔からのやり方がそのまま残り、安全を重視したやり方に変わらない。また、情報交換も陸上に比べれば少なくなってしまう。
その結果、安全対策がなかなか取り入れられないでいる。海運業界の労働災害の発生率は、林業に次いで高い状態が、これを物語っている。


次いで帆船礼賛思考だ。帆船を運航するというのは、昔ながらの方法で気象海象を読み運航することになるから、船員にとって素晴らしい教育方法である、という考えだ。
この主張としては、主に下記があげられる。
 ・気象や海象への理解が深まる
 ・マスト上での作業で高所作業能力が養われる
 ・昔ながらの運航により、天測などの理解が出来る
 ・厳しい環境でチームワークの大切さが養われる
 ・帆船の美しさから、船舶業界の優れた宣伝材料になる


しかし、世界中を見て、船員の教育に帆船を用いている国はごく少数だ。
なぜなら、宣伝材料以外は、帆船に拠らずとも出来ることだからだろう。
本当に帆船教育が優れているというのなら、帆船教育の有無での事故の発生や生存率などを比較して示して欲しいものだ。
私個人の推察だが、上記の理由はとってつけたものでしかない。
私が推察する理由は、「教官たちが帆船に乗りたいから」だと思う。
実際、教官の多くは、練習生時代の帆船での実習が楽しさを忘れられなくて、教官の道に進む人が多い。


以上の状況から考えると、私の考えとしては、練習船としての帆船は不要であると考える。
帆船でなければ訓練できないというのは、教育する側が安全を確保しつつ訓練内容を充足する方法を考えることを放棄しているということだ。
怠慢であると言わざるを得ない。
それでも帆船を使うのであれば、ダブルランヤードの安全ハーネスの導入、マストの昇り降り中も確保できる方法が必要だ。


練習船で不安全な方法に慣れてしまえば、訓練生はその後の人生で不安全状態を許容し、後輩にその状態を押し付けることだろう。
現状の船業界は、そういう状態だ。練習船でしっかりとした安全意識の植え付けができれば、今後の労働災害の発生率の低下に寄与するだろう。
問題を個人の不注意に帰させず、訓練生の安全が確保できるよう、原因究明と再発防止策、教育内容まで検討して欲しい。
今回はたまたま起きた事故ではない。今までたまたま事故が起きてなかっただけなのだから。


帆船は美しいからなくすなって?
それは多数の若者の命を懸けさせるに値するものですか?